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文献カードを作ろう airpenの活用 「airpen」のススメ

「airpenではじめるGTD」

アナログ世界とデジタル世界のゲートウェイ

 GTD(Getting Things Done)は、米国のコンサルティング企業経営者デビッド・アレン氏が提唱している作業管理手法です。適用分野は広く仕事や日常、学業から人生設計など様々な対象をカバーしていますが、そのシステマチックな動作体系から特にIT業界関係者、知識労働者と呼ばれる人々の支持を集めています。

  解説書としてはアレン氏による "Getting Things Done: The Art of Stress-Free Productivity" があり、日本語版は「仕事を成し遂げる技術―ストレスなく生産性を発揮する方法」が発売されています。また、日本では百式管理人こと田口元氏が積極的に実践や情報発信を行っており、勉強会の開催や新たな書籍の監訳(『ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則』も行っています。概要をひととおり掴みたい場合、田口氏による一連の解説記事は読んでおいたほうがよいでしょう。

  この手法が話題を集めた理由の一つとして「作業の手順をルールとして示しつつも、特定の環境に依存する使い方を強制していない」ことがあげられます。「この型の手帳にこう書き込め」「このソフトウェアを買え」といった指示が一切ないので、各人が手になじんだ信頼できる道具を使いながら自らの創意工夫を取り入れることができます。 その動作の仕組みを次の章に示します。


“Getting Things Done”の原著
他社製品とは一線を画すファッション性

 GTDの動きは大きく5つのステップに分かれます。
(1) Collection(収集)…自分の頭の中で気になっていることを全て書き出す。「もう頭の中が空になった」と言えるまで書き出す。
(2) Processing(処理)…ステップ1で書き出した各項目を図1のルールに従って、しかるべきリストに振り分ける。図中の赤枠部分がリスト。
(3) Organizing(整理)…ステップ2で振り分けられた各リストの内容をカレンダや手帳、PDAに書き込んでいく。
(4) Reviewing(レビュー)…ステップ2の各リストを見直し、今後の実際の行動内容を決定する。
(5) Doing(実行)…あとは現場で動くのみ。

GTDの処理の流れ

 上図が振り分けのルールです。 日々コンピュータに触れている人なら「これはフローチャートだ!」とすぐに気づき親しみを感じることでしょう。しかし実際に行おうとするとステップ(1)の「収集」が最初にして最大の難関となり、次に収集から(2)の「処理」へ向かう所で困難に直面します。
収集はやりかけの仕事、これからやろうと思っていることをもれなく一箇所に吐き出すので、とにかく時間がかかります(初回時の目安は2〜3時間)。「処理」も慣れないうちは振り分けの判断基準が自分の中で定まっていないのでしばらく悩むことがあるでしょう。
 逆にこの2つをうまく乗り切ってしまえば、あとは自然に体が動き上記ステップの繰り返しが日々の中で回るようになってきます。

アナログ世界とデジタル世界のゲートウェイ

 かく言う私も2年ほど前にGTDに挑戦した時、初回のステップ(1)と(2)の部分で力を使い果たし「もう二度とこんなことはやるものか」と思っていました。方法論としての魅力は十分に感じたのですが、実作業の面倒な負荷に耐えてまでやるほどのものではないと判断し、その後の動きを止めてしまったのです。イベント会場で田口氏にお会いした際「GTDのどの箇所でつまづきましたか? うまくいかないと感じたのはどこですか?」と訊かれ「ステップ(1)の『収集』でヘトヘトになり、ステップ(2)に向かった所でこれは無理だと思いました」と素直に告げたことをよく覚えています。

  まず(1)の収集はA4用紙に隙間がないくらい頭の中身を書き出して総量はたっぷり5枚、そこから(2)の振り分け作業を行うためにコンピュータ上のテキストエディタに打ち込んでいったのですが、もうこの時点で始めてから8時間は経過していました。「そこまで手間がかかるなら、最初の収集の時にテキストエディタで書いてしまえばよいのでは?」と思われるかもしれませんが、それは少し違うのです。収集は「頭の中の気になることを全て外に出す」作業なので、自分の頭以外の気の利いた情報処理装置がそこにあると邪魔になります。

  「道具や環境に依存しない」と書きましたが、このステップにおいてはツールはやはり紙がよいと思います。実際にGTDを継続されている方の多くが「最初は喫茶店などの落ち着く場所に行き、全てを紙に書きました」と語っていることの意味はそれなりにあるようです。「挫折したままでは寂しい、方法をよく練ってもう一度挑戦したい」と考えていたところ、ちょうど良いタイミングで出会えたのがairpenでした。

他社製品とは一線を画すファッション性

airpenでGTDのステップ(1)「収集」を行う様子

 もしかするとGTDのステップ(1)「収集」にairpenが有効なのではなかろうか? と感じた私は、そのまま夜のファミリーレストランに向かいました。苺のガレットとコーヒーだけを注文し、あとは「猛烈な勢いで何かを紙に書き、時々思い出したかのように天を仰ぐ」を何時間も繰り返したのですから変な客と思われたかもしれません。

  しかしその効果はすぐに表れました。書くところまで書いて帰宅し、"airpen Manager"を使って手書きデータの吸出しとテキストへの変換。そのままの勢いでテキストエディタに貼り付けて振り分けを行いました。すぐにやらなくてもよい内容は「いつかやる/たぶんやる」、日時の確定した予定は「カレンダー」と、次々に書き込んでいきます。各リストは自宅でも出先でも読み書きできるように、WWW上のProtopageという付箋ツールとYahoo!カレンダーを併用しています。

  思わぬ出会いから「GTDやりなおし人生」を始めて数週間。その間に「仕事がバリバリできるスゴい奴」になったとは(まだ)言えない状態ですが、日常の中でいつも未解決の問題を気にかけるような、モヤモヤとしたストレスは確かに減ったと感じています。また、何かを始める時の動き出しも早くなりました。これはGTDの処理手順にある「2分以内でできる?」という問いが効いているのだと思います。

 最初に「GTDはIT業界関係者、知識労働者に支持される」と書きましたが、実際には業種や職種よりも個人の性格や気の持ち方との相性が大きいでしょう。もしあなたが
・人が見逃すような細かいことにもよく気づく
・色々な方面にアンテナを伸ばしていて、興味や行動の幅が広い
・何においてもマニアだ
と評されているなら、GTDの考え方や作業手順はピタリとハマることでしょう。多くのことを感じて受容するタイプの人がそれだけ大容量の、かつ切り替えの素早い記憶装置を頭の中に有していればよいのですが、実際にはそううまくはいってくれないからです。

  GTD実践者の間でよく使われる比喩に「脳はハードディスク(HDD)ではない」というものがあります。何にも邪魔されず、頭の中の「気になること」を書き付けていく際にairpenは優秀な外部記憶装置として働いてくれるでしょう。
  これから新たに始める人も再挑戦する人も、まず「最初のヤマ場としての『収集』を乗り越える」ことに注意を払ってみてください。頭ひとつ身ひとつでできるならそれもよいですが、その際にちょっとした情報文具の助けを借りるのは、何ら恥ずかしいことではありません。

大学研究員、講師をつとめながら企業向けソフトウェアの開発、執筆活動も行う。専門分野はe-Learningを中心とした教育工学で、学習者支援のためなら画像処理やセンサ技術、Webのメタデータ配信までなんでも使う雑食路線を突き進む。
ここ数年はソーシャル・アプリケーションの開発や利用者分析も行っており、共著書に「ソーシャル・ネットワーキング・サービス 縁の手帖(翔泳社)」「mixiでこんなことまでできた!(青春出版社)」がある。
「本好きではないが本屋が好き」という不思議な習性も持ち合わせており、休日などに大型書店に入ったら4〜5時間は出てこない。晩年に住みたいと願う街は当然のように神田神保町。


airpen試用レポート >> 第1弾 「文献カードを作ろう」
  >> 第2弾「airpenではじめるGTD(作業管理手法)」
   
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